アトピー性皮膚炎とワセリンと理研の論文について

理研の論文データ

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今日はまじめです。

早速ですが、今日話題になった論文は従来の論文と異なるアプローチでアトピー性皮膚炎の原因を探った良い論文です。

何がポイントなのかを簡単にまとめます。
・アトピー性皮膚炎モデルマウスの新規作成
・JAK-STAT系の活性化の発見とヒトとの比較
・プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)発現増加の確認
・ワセリンなど皮膚バリア機能改善による症状低減の解明
・それでも100%原因が分かったわけではありません

解説します。
●アトピーモデルマウスの新規作成
今までモデルマウスは沢山作られてきたんですが、急性のアトピー様症状のマウスしか作られていませんでした。
NC/Ngaマウスと呼ばれる、自然に急性アレルギー症状を皮膚に起こすものです。
これでは慢性化した皮膚病には対応できないので、一部分しかアトピーの炎症反応については解明できていませんでした。
今回は、まず慢性化する皮膚疾患を呈するマウスを薬品で3000匹の中から選別してSpadeマウスという名前でちゃんと新規に作成したところが良いです。
しかも慢性的にアトピー様症状を起こすので、今後の研究に対して非常に役立つ可能性を秘めています。

●JAK-STAT系の活性化(遺伝子・タンパク質発現の調整機構)
以前からSTAT系の阻害でアトピーやアレルギーが治まることは分かっていました。
それが、角質を剥がれ落ちる時に作られるプロテアーゼが増加することで、皮膚バリア機能が損傷、そこからアレルギーを起こす物質が入ってくるという流れであることが分かった点が素晴らしいです。

●プロテアーゼ発現の増加を確認
実際にヒトも含め、Spadeマウスでは上記の仕組みによりタンパク質分解酵素が皮膚に大量にある状態になり、それが皮膚を障害していること、またそれをワセリンなどの皮膚バリア保護機能のある薬剤で防ぐことが可能なことを示した点が素晴らしいです。

●ワセリンなど皮膚バリア機能改善による症状低減の解明
昔から保湿剤はアトピーには症状の大小を問わず使うよう、厚生労働省科学研究班のアトピー性皮膚炎治療ガイドライン(http://adtherap.kenkyuukai.jp/journal2/journal_detail.asp?journal_id=97)で述べられていました。
今回、何故ワセリンやヒルドイドなどの皮膚バリア機能がある製剤がアトピーに良いかが解明されたことが素晴らしいです。

●それでも、まだ道半ば
実は、10年前にもフィラグリンという遺伝子(皮膚の保湿を司るタンパク質をコードする遺伝子)の変異によるアトピー発症は報告されています。
日本人だとだいたい20%ちょっとぐらいの患者さんに、この遺伝子の変異が見られます。
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/derma/research_atopic.html
今回も、6人中4人にJAK1の遺伝子変異があったということで、やはり100%病気の原因はこれだ!というところには至っていません。
それでも、非常に有用な研究であることは間違い無いので、今後も続けて行かれることを期待しています。

現場からは以上です。





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